. 委員による提言

5.提言にかえて―群馬県視聴覚センターの取組―
立見 康彦

はじめに

 本調査研究委員会に出席し、「最近開発された学習資源の提供を可能にする情報機器及びシステム」や「社会教育施設における実践研究」、「インターネットテレビ会議による地域交流」を見ながら、「情報化社会における学習資源提供の在り方に関する調査研究」について考えてきた。その中から、群馬県視聴覚センターや群馬県視聴覚ライブラリー連絡協議会の取組の中に生かせることを述べることで提言にかえることにする。

1.群馬県視聴覚センターの取組から
  (1)メディア活用指導者養成講座 
   群馬県視聴覚センター(以下、センターとする)では、今年度まで、「パソコン指導者養成講座」の名称で、パソコンの指導者養成をソフトウェア別に実施してきた。

 今回紹介されているモバイル機器、多機能デジタルカメラ、デジタルカメラ付手書き携帯端末などは、生涯学習の幅を広げる非常に便利で有効なメディアである。また、このようなメディアはますます改善・進歩が著しくなることから、これらを活用するための講習を希望する人が増えるものと予想される。そこで、来年度からは、メディアを統合して使う機器としてパソコンを位置づけ、単なるパソコンソフト活用のための指導者の養成ではなく、パソコンを中心に据えて新しいメディアを効果的に活用できる指導者を養成したいと考え、「メディア活用指導者養成講座」として実施する。

 つまり、これからの社会教育施設での視聴覚教育や情報教育に関する研修では、単なるパソコン学習でなく常に新しいメディア活用の観点を取り入れたものにする必要がある。

(2)群馬県教育委員会制作郷土映画のDVD化
   群馬県教育委員会では昭和40年代から郷土映画を年間10本前後制作してきた。郷土の自然や文化の貴重な映像資料になっている。センターでは、それらの映画をDVD化し、扱いやすいものにすることにより、利用促進を図るとともに、部分利用を認めることでマルチメディア教材の素材映像としての再活用を推進するものである。

 平成15年度から映画の1秒間24コマに対応するデジタルビデオカメラを整備し、リア投影式の映写室でDVDへの変換をしている。特に、文化映像をDVD化している。群馬県においては、伝統文化の継承、発展のために「ぐんま郷土芸能活性化事業」「小中学校伝統芸能教室」「ぐんま伝統歌舞伎」などの事業を行っているが、その中で、DVD化した「人形芝居」や「農村歌舞伎」などの映像の活用を図ろうとしている。また、各々の事業の中で、活動状況の記録、再生が簡単にできることは、貴重な映像が、機を逸することなく蓄積され、利用されていくことになる。従って、今回紹介されているモバイル機器や多機能デジタルカメラは、非常に役立つものと予想ができるので、センターとして整備し、活用を図りたいと考えている。つまり、過去の映画映像はDVD化で、現在の映像は手軽な多機能デジタルカメラ等で伝統文化の継承、発展に結びつけられるものと期待される。

(3)CD−ROM版の地域映像素材集の作成
   センターでは、各地域ライブラリーと連携して、CD−ROM版の地域映像素材集を24種類制作し、各地域ライブラリーで貸し出し、活用してきた。これまで素材集はすべて静止画像であったが、これからは、動画の映像素材集の要望も多くなると予想される。この場合もモバイル機器や多機能デジタルカメラは、非常に役立つものであり、センターで整備し、地域ライブラリーに貸し出して活用したいと考えている。 

(4)教育工学室(パソコン室)のパソコン環境の改善
   まず、(1)の「メディア活用指導者養成講座」を可能にするためには、新しいメディアを統合的に扱え、その研修ができるパソコン環境を整える必要がある。教育工学室の利用者も、そのことを強く希望している。そのために、新しいメディアの整備とパソコンの更新を計画的に実施するための予算的措置を講ずることが必要である。特に、今回の調査研究の会議に参加して、インターネットテレビ会議の有効性や面白さを実感するとともに、近い将来、急速に普及することが予想される。また、テレビ会議をするときのリテラシーの必要性も痛感した。そこで、このリテラシー研修を可能にするパソコン環境を整えることは社会教育施設の重要課題であると思われる。センターの場合、平成16年度がパソコンの更新年度に当たり、今まさに、このことを検討しているところである。

  (5)メディアの整備 
   平成13年度から毎年1セットずつ、パソコンによるビデオ編集機器セットを整備してきた。それらを、学習団体・グループや地域視聴覚ライブラリーに無料で貸し出している。利用者は、常に最新の機器で学習できるので非常に好評である。また、平成13年度にIT講習会のために整備されたノートパソコンを、平成14年度からセンター内の研修室で無料で利用できるようにした。今までは、教育工学室でしかパソコンの学習はできなかったが、ノートパソコンで対応できる内容であれば、それを借りて、どの研修室でも学習できるようにした。つまり、メディアの整備に当たっては、いつでもどこでも学習できる体制のためのものになるよう努力している。

(6)エル・ネット受信公開
   エル・ネットについては、これから「オープンカレッジ(大学の公開講座)」や「社会教育主事講習」など、大学レベルの高度な講義が手軽に視聴できるものである。毎年その内容やインターネット等を活用した広報も年々充実してきていることから、個人視聴の要望が増えるものと予想される。そこで、センターでは、録画も可能な個人視聴ブースを整備して、県民の要望に応えられるにした。もともと、全ての研修室で受信できるように配線してあったので、集団学習はできるようになっている。  

 群馬県の生涯学習では、エル・ネット「オープンカレッジ」の視聴をすれば「ぐんま県民カレッジ」の単位取得の認定をすることとして、平成15年度の後期から広報を始めた。そのことからも、個人視聴の要望は高まるものと考えられる。県内には37の受信施設があるが、エル・ネットを個人視聴できるようになっているところは非常に少ない。従って、個人視聴できるような設備になるように働きかけていきたい。

(7)自主学習グループの活動
   視聴覚センターでは、パソコン学習をしている自主学習グループが11ある。自分たちで自主的に学習計画を立て活動している。センターの援助としては、いつも安心して学習できるようメンテナンスに心掛けている。また、技術の向上に対しては、センターの指導者養成講座に積極的に参加するので、毎年新しい内容の講座になるように工夫・改善している。さらに、センターが主催するさまざまな講座の中で、グループのリーダーが講師補助として協力してくれている。

 日々発展するメディアを活用するための研修会場である施設を運営するには、常に利用団体の声に耳を傾けることが重要であり、そのためにも利用団体とさまざまなことで連携しながら、その育成を図っていきたいと考えている。
2.群馬県視聴覚ライブラリー連絡協議会の取組から

 県内にある視聴覚センター・ライブラリーで組織する群馬県視聴覚ライブラリー連絡協議会では、その一番大きな事業として「群馬県自作視聴覚教材コンクール」を開催している。センターはその事務局を担当している。今年度のコンクールで、富岡甘楽視聴覚ライブラリーで制作した「かぶら川探検隊」が最優秀賞に輝いた。この作品は、地域の自然と文化の源である「かぶら川」を題材にしたマルチメディアソフトで、理科や社会科、総合学習において、学習が多角的・発展的にできるような内容になっている。

 特に、この作品の優れているところは、実際に現地に行って調査し、収集した豊富なデータを基に分析し、しっかりとした視点に立って制作されている点である。また、調査の様子は写真やビデオに収められて、「かぶら川」流域にある富岡・甘楽地区の特色ある地域性をも充分伺えるところである。実際の調査とその映像がある作品は大きな臨場感と感動を与えるものであり、審査の中でも大いに評価されたところである。従って、今回紹介された最新の情報機器は、これからの調査と映像の収集に非常に役立つことから、センターで整備し、ライブラリー等に貸し出して、一層の教材づくりを推進していきたい。
おわりに

 地域における教育メディアの利用は、これまで視聴覚センター・ライブラリーなどの社会教育施設を拠点に推進されてきた。教育メディアの進歩が著しい中、その利用促進を図るために、社会教育施設の中でも視聴覚センターやライブラリーが、教育メディアに関する研究・研修、教材供給、情報センターとしての役割を強化した、いわゆる最新のメディアセンターとしての役割を果たす必要性がますます高まっている。

 このような状況下において、今回の提言した内容は、多くの視聴覚センターやライブラリーで参考になるものと思われる。