.国内開発状況調査

国内開発状況調査
中山  実

 本調査研究の目的に従い、学習資源提供に適する最先端の情報機器の開発状況を調査し、それを利用した新しい学習スタイル等の現状調査をすることにした。
 そこで、以下のような内容で調査することにした。

・対  象: 国内の電子情報機器開発企業 133社
・内  容: 学習資源提供を目的に開発した情報機器について開発状況を調べ、それらの機器が教育の場においてどのような活用が可能であり、かつ有効であるかについて調査することにした。
・調査方法: 質問紙による記述回答
・実施時期: 平成14年11月5日〜11月20日


1.
質問紙の作成
  本目的で調査を行うために、別紙のような調査質問紙(28頁参照)を作成した。本研究の趣旨や目的は、依頼文に明記し、趣旨に合う内容については、何件でも回答するようにお願いした。
  質問紙の構成を以下に示す。
     
  問1: 情報機器・システム名
    商品名や内容、資料の有無を下位項目で尋ねた。
     
  問2: 分類
    1) 教育機器・システム
    2) 一般向け情報通信機器・システム
    3) ユーザーインターフェース用機器
    4) ソフトウェア(教材・コンテンツは除く)
    5) デジタル文具
    6) その他
      これらの分類は、いわゆる教育機器として開発されたもの、一般向けとして開発した製品が教育に利用可能であるもの、学習者支援のためのユーザーインターフェース用機器、ソフトウェア、デジタル文具、その他とした。単なるソフトウェアでは多数ある上、教育用に限ってもコンテンツが多数販売されているため、ソフトウェアについては教材やコンテンツは除いて回答をお願いした。
     
  問3: 情報機器型名・システム構成機器
     
  問4: 商品コンセプト
    セールスポイントなどを記入頂き、情報機器・システムの特長が良くわかるように回答をお願いした。
     
  問5: 利用方法
    本調査目的から、下記の教育における利用方法を具体的に回答頂いた。
    1) 学校教育
    2) 社会教育
    3) 家庭学習
     
  問6: 価格
     
  問7: 実践事例の有無
    先進的な取組と思われる事例については、実地調査したいと考え、さしさわりがない範囲で具体的な教育機関名をあげて回答をお願いした。
     
  問8: 御社での展示の有無
    実物確認の可否を回答頂いた。
     
  問9: 該当機器の無償貸し出しの可能性
     
  問10: 回答者名、所属、連絡先
   
   
2. 回答の概要
  前述のように、133社宛に、調査用紙を送付した。その結果、58社121製品の回答があった。前項の質問項目からわかるように、製品の分類についてはその段階から複数回答を認めた。各分類における回答製品数を以下にまとめる。
 
1) 教育機器・システム 73
2) 一般向け情報通信機器・システム 28
3) ユーザーインターフェース用機器
4) ソフトウェア(教材・コンテンツは除く) 42
5) デジタル文具
6) その他
 ただし、これらの分類は回答者による判断で選択しているため、必ずしも内容があっていないものも見られた。なお、学習情報資源提供を前提としたため、教育機関向けに開発したものや既に利用されている製品に関する回答が多かった。今後、利用可能になると期待されるような先端技術を用いた機器・システムを期待したが、製品として公表されていることを前提としたため、この種の回答は得られなかった。

3. 各分類ごとの回答内容
  各分類ごとにまとめて内容を説明した。
  (1) 教育機器・システム
  1) e-ラーニングなどインターネット利用遠隔教育
    ここでのe-ラーニングは、インターネットを使った学習である。このような学習環境を提供したり、学習状況の管理を行うシステムが回答された。いわゆるWBT(Web Based Training)の形式だけでなく、動画をストリーミング形式で視聴するオンデマンド機能、遠隔地への動画配信による教育も可能である。また、教育学習支援の機能として、学習履歴だけでなく教材開発、学習成績や学習内容に関連する図書情報などを含めて総合的に管理運用するシステムもある。またこれらのシステムに、教科の学習内容を提供したり、宿題提出や採点機能を組み合わせるなど、具体的な学習システムとして提供されているものもある。
各種教育での利用方法についてまとめる。
    学校教育
      e-ラーニングは、大学などで利用が進められており、大学講義の補助的な教育方法としても取り入れられ始めている。教材作成や学習コース作成、学習データ管理などに利用されている。大学以外の学校でも、個別学習、宿題の作成配信、補助・補習教材としての利用などが挙げられる。場所の制約がないため、海外の日本人学校、帰国子女、病院、院内学級、不登校児童生徒への学習機会の提供も可能になる。そのため、後述する家庭学習への拡張として利用することもできる。
    社会教育
      e-ラーニングは企業内教育で普及していると言われている。これを生涯学習として学習プログラムを提供することによって、さまざまな情報提供や学習機会の提供につながる。特に非同期型の学習であれば、場所と時間の制約がないため、幅広いニーズに対応できる。また、同期型学習として社会教育機関から生涯学習の内容を地域内外に提供することもできる。
    家庭学習
      学校教育との関連から、家庭で宿題の提供を受けて回答することもできる。また、授業内容が提供されていれば、予習復習に活用できる。各学習者個人での参加になるため、個別学習と個別指導を充実させることもできる。さらに、大学生以外が大学の講義内容を聴講するなど、幅広い学習環境で学習することが可能になる。

  2) インターネットサーバクライアント形式システム
    e-ラーニングの環境も、機器の構成から見ればコンピュータネットワークにおいて学習教材を保存したり、学習者の評価プログラムを実行するサーバと、学習者が利用するコンピュータ端末であるクライアントである。e-ラーニングを主たる目的としないシステムでも、さまざまな利用方法がある。特に、学校で整備されたパソコン教室を有効に利用するためのシステム提供や、複数のパソコンを使った学習環境であるグループウェアの実現を支援するシステムなどがある。各種教育での利用方法についてまとめる。
    学校教育
      パソコン教室に設置されたコンピュータを、ソフトウェアによってLL教室、視聴覚教室のような機能を持たせて利用できるようにするシステムがある。また、一斉授業において教材を作成提示したり、課題の提示や実習に利用できる環境を提供するシステムもある。これらの機能をインターネットで情報を提供するWebサーバで管理運用して、アンケートの実施や質問を受け付けるなど、Webによるコミュニケーション支援や学習支援を行うシステムとして利用することができる。さらに、これらの機能を1つのサーバに持たせ、サーバごと利用提供するサービスもある。
    社会教育
      公開講座などの学習コンテンツを作成したり公開する支援ツールとして利用できる。また、講座内容のシラバス作成の支援が可能である。Webを介したコミュニケーションを円滑に行うことによって、社会人教育や生涯学習に活用することもできる。
    家庭学習
      Webを使って、教材や資料を利用することができるので、自宅での学習に利用可能である。

  3) 映像サーバ
     これまでにも映像教材は、ビデオテープやCD−ROMなどで提供されてきた。これをネットワーク上のサーバとクライアントで利用する方法として、ビデオオンデマンド
(VOD:Video on Demand)の形式で利用する方法がある。単に、映像素材を蓄積するだけでなく、ビデオテープの素材や、CD−ROM、DVDの素材を統合的に管理したり、索引付けがなされて利用しやすくしたシステムなどもある。
    学校教育
      コンピュータ教室や図書室、学校内のコンピュータネットワークを使って普通教室などで、必要な動画像コンテンツを視聴できるので、授業などで利用できる。これによって、校内の映像管理システムを実現することもできる。また、映像配信の技術を使うシステムもあることから、リアルタイムで映像伝送することで、テレビ会議や遠隔教育に利用できるシステムもある。
    社会教育
      博物館、美術館、図書館で所蔵する絵画、彫刻、映画などを、来館者に提供したり、館内案内システムとして利用することができる。
    家庭学習
      家庭内で映像コンテンツを視聴することが可能である。ただし、家庭への回線速度が、動画像再生に対応できる容量であることが必要である。

  4) コンピュータ、ネットワーク管理システム
    パソコン教室など、多数のパソコンを設置した場合は、システムの管理はパソコン台数分について必要になる。また、学校教育などでは不特定多数の利用者が1台のパソコンを共用するので、設定の変更や異常が発生した場合には、個別に対応する必要がある。そこで、これらを一括管理するシステムが提供されている。
    学校教育
       教室内のネットワークを用いて、教師用パソコンから全パソコンの設定を一括設定する。パソコン1台ごとの設定などが不要になる。また、データ共有などで不適切な書き込みを削除して、Web公開やコミュニケーションにおける問題を回避するためのシステムもある。
    社会教育
      生涯学習講座などで、パソコンを地域などに開放する場合にも、学校教育の場合と同様な利用が可能である。
    家庭学習
    家庭内だけでの利用はほとんどないと思われるが、インターネットで提供されるサービスの利用者として、これらのシステムを利用する機会はあると思われる。家庭でのインターネットサービスの活用は、アプリケーションプログラムの機能をサーバでユーザに提供するASP(Application Service Provider)の利用であると考えられる。これは既にサービス提供側でネットワークを高度に管理しているシステム上で実現されており、学習者は間接的な利用者である。

  5) 電子情報ボード、(プラズマ)ディスプレイ
     電子情報ボードや大画面表示システムなどである。これらはプレゼンテーションに活用できる上、教室などで情報を共有できるメリットがある。ホワイトボード、プラズマディプレイなどを利用したものが多い。プレゼンテーションの内容に黒板と同じように書き込みを加えたり、保存することもできるものが多い。プラズマディスプレイを用いたものは、単に大型表示装置としても利用可能である。基本的には、教室などの集合学習で利用可能である。博物館などにおいても同様な利用が可能である。このように集合学習での利用が中心であるため、家庭での利用は限られる。

  6) デジタルカメラ
    先生の教材作成や記録用として学校教育での利用が多い。防水、防塵型のものは、生徒のフィールドワークの記録用としても利用可能である。特に、回答には見られなかったが、既に社会教育施設での記録やWeb利用のための画像として利用されている。Web活用の講習会などでは既に多く利用されていると考えられる。また、デジタルカメラは既に個人でも保有する人も多く、趣味や学習などに利用されている。

  7) 電子辞書
    英語、国語、漢字、古語などの電子辞書がある。これらの語学授業で活用できる。また、家庭学習においても同様に利用可能である。ただし、通常の辞書と違った利用方法はそれほど見受けられない。また、電子辞書を応用した英語の学習機もある。これは生涯学習としての個人学習用具として英会話や英語の学習に利用できる。これらを個人で保有する人も多く、家庭での学習にも利用できる。

  8) 電卓
    電卓と一口にいっても、小学校でも利用可能な分数四則演算対応、グラフ関数電卓、簿記会計に対応した電卓などがある。さらには、BASICやC言語に対応するポケットコンピュータがある。いわゆる電卓は、学習における計算処理の道具として活用される。算数教育や数学教育として授業で計算道具として使われる事例もある。教育目的の電卓には、上記のような機能があるため、それぞれの内容を扱う学校の授業などで活用される。ただし、社会教育や家庭学習でも、簿記などが学習されている。ただし、家庭での利用では、このような目的に応じた電卓よりもごく一般の四則演算中心の電卓が使われると思われる。
 その他、上記に分類できなかったものとして、以下のような回答があった。

  9) 教育用コンピュータ
    大学での情報工学実験などに利用する教育用コンピュータである。実験での利用を前提にしているため、他の目的に転用しにくい。ただし、学校教育用のコンピュータやコンピュータキットはこれまでも販売されてきた。コンピュータの動作を理解したり、応用方法が検討できるなどの長所も多いが、その指導にはある程度の専門知識が必要である。社会教育や家庭学習としては、ホビーとしての利用が知られている。

  10) 手書き入力システム
    パッド状の盤上で紙にボールペンなどで書いた文字や図形を、コンピュータに入力することができる。そのため、コンピュータ操作や学習における手書き入力に利用することができる。最近、遠隔教育などでは、教材をあらかじめ電子媒体として作成し、これを用いることが多い。これらの教材を提示しながら、必要な指示をしたり、書き込みや添削をすることができる。また、ネットワーク上でグループ間で共同作業をする場合にも、手書き情報が有効である。このような特徴を持つため、各種教育における入力デバイスとして利用可能である。

  11) ワープロ操作支援システム
     ワープロなどの操作は、高機能であるためどのように操作するかが複雑である。また、メニューの内容が初心者や子ども、高齢者にわかりにくい。そこで、ソフトウェアによって、メニュー内容などを、利用者のレベルに合わせて表示して、操作を支援するものである。
 学校教育では、特に小学校の低学年向けに利用できる。生涯学習では、初心者や高齢者などのワープロ利用経験が少ない利用者に、利用教育を行う上で有効である。家庭でも同様に利用可能である。

  12) el-Net (education and learning Network)
    文部科学省が運営する教育情報衛星通信ネットワークである。
学校教育用としては、「子ども放送局」の番組を、学校や図書館で見ることができる。また、科学博物館などから教育プログラムを学校等に対して配信することもできる。
生涯学習用としては、オープンカレッジとして大学などの公開講座を放映している。さらに教員研修プログラムも放映されている。
このように、本システムは学校教育と社会教育における教育プログラムを提供している。受信機は、公民館などの社会教育施設に設置されており、利用可能である。ただし、一般家庭で受信できるような仕様になっていない。

  13) CALLシステム
    Computer Aided Language Learning systemで、コンピュータ利用の語学学習システムである。大学などの学校教育で語学教育のシステムとして利用されている。e-ラーニングとしての語学学習もこれに含まれる。これまでの語学学習の教材は、外国語の会話などがテープやCDによる再生が中心であった。多くのCALLでは、音声が電子的な情報であるので、音声再生のスピードを任意に変えたり任意の場所で繰り返すなどが可能になる。また、音声、画像の多様な関連づけも可能になる。現在のシステムでは、大学などでの利用が中心であるが、小型化や簡易化することによって、社会教育や家庭学習での利用が期待される。

  14) インターネットによる気象データ観測
    景観情報や気象情報を観測し、全国規模でデータ収集するシステムである。本システムは、単に個別の観測装置だけでは実現できない。全国規模のコンソーシアムの運営によって、実現するものである。
学校教育においては、理科、社会、総合的な学習などに利用可能であり、既に授業実践も多く行われている。設置箇所が多くなれば、地域内の気象情報の交換や地域の情報交換にも利用可能であると期待される。

  15) 音声再生本
    音声再生ができる電子本の一種である。本の紙面をペンタッチすることによって、電子記録された音声が再生されるものである。本としての印刷情報と対応させることによって、語学学習や簡単なインタラクティブ性を持たせた書籍として利用できる。
学校教育では、外国語や国語の読み上げなどの語学学習に利用できる。学校教育以外でも、個別学習の教材や、知育教材として利用することができると期待される。

  16) デジタル顕微鏡
    パソコンに接続して利用する顕微鏡である。単に顕微鏡下で覗くだけでなく、パソコンに記録したり画像処理できる。顕微鏡として、理科の授業で利用したり、パソコンの利用法として活用できる。

  17) 電子楽器
    鍵盤付電子楽器である。狭義には、電子ピアノや電子オルガンとは区別される。電子楽器では音色や音程は、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)とよばれる規格でデータとして扱われている。このため、電子楽器ではこのMIDI規格の入出力が装備されている。電子楽器をコンピュータと組み合わせて利用することもできる。

  18) 図書館システム
     図書館の電子化が進められている。蔵書管理の支援システムから、蔵書の電子化を含めた大掛かりな電子図書館の構築である。学校教育では、蔵書情報や貸し出し管理などを一括して管理したり、Webで提供される書誌情報を活用するシステムが利用されている。図書館は、社会教育や家庭学習でも重要な役割を担う。各自治体の図書館でこのような電子化が進めば、生涯学習や家庭学習で有効に利用される。


  (2) 一般向け情報通信機器・システム
    ここでは、特に教育利用を想定していない製品が、利用可能であると思われる内容について述べる。

  19) 携帯情報端末
    手帳程度のコンピュータであり、持ち歩いて利用することを前提としている。一方、通信機能を用いて他のコンピュータと接続したり、携帯電話の通信機能などを用いてインターネットに接続することも可能である。
学校教育利用としては、普通教室や屋外での学習支援に利用することが可能である。既に、屋外観察の記録用として利用する教育実践もある。
社会教育や家庭学習としては、個人学習の教材利用や他の人とのコミュニケーションツールとして利用することが考えられる。
近年、携帯電話の機能も高度化しており、携帯電話会社が提供するメッセージ交換システムによっても、コミュニケーションの支援が可能である。例えば、携帯電話から学校などが公開するWebを参照することによって、連絡網の役割を持たせることができる。

  20) ソフトウェア
    一般的なソフトウェアで教育利用できるものは多数あるが、ここでは調査回答されたソフトウェアについて説明する。
Webの構築ソフトウェアは、学校や社会教育機関においても、煩雑な作業である。
Webページの作成、運用管理ツールは、これらの作業を支援するものであり、教育機関で利用されるソフトウェアである。また、前述のワープロ操作支援システムもこれに含まれる。

  21) ハードウェア
     教育利用可能なハードウェアとして以下のような回答があった。
 ネットワーク上でデータを共有するためのディスク装置は、データ保持の信頼性とデータ保護の安全性が必要である。これらの機能を持つファイルサーバやネットワーク対応のディスクが必要である。教育機関でのデータ共有とデータ保持に利用できる。データの機密性を確保するために、指紋などの生体情報を使って個人認証を行う装置もある。

    この他、「教育機器・システム」でも説明した
  22) e-ラーニング
  23) VOD
  24) 表示装置
  25) 電子情報ボード
  26) 音声再生本
  27) ネットワーク管理システム
     なども挙げられた。


  (3) ユーザーインターフェース用機器
    本分類としては、先述の
  28) 電子情報ボート
  29) 液晶ディスプレイ付き手書き入力装置
  30) 音声再生本
    の回答があった。他の分類と比較して回答数が少なかった。回答が得られなかったが、教育利用可能なユーザーインターフェース用機器は多いと考えられる。ただし、インターフェース用機器単体での販売が少ないため、他のカテゴリーで回答されているようである。

  (4) ソフトウェア(教材・コンテンツは除く)
    教育に利用可能なソフトウェアとしての回答数は多かった。「教育機器・システム」などがソフトウェアによって実現されているため、重複する回答も多かった。

  31) グラフィックスソフトウェア
    コンピュータグラフィックス、イラストなどを作成するソフトウェアである。単純な平面的な図形やイラストを描くだけでなく、立体画像(3−D)や動画として作成するソフトウェアもある。また、学校教育以外の一般でも利用可能なソフトウェアが多いが、児童・生徒が使いやすいようにしたり、ストーリー性を持たせて脚色ができるようなソフトウェアもある。これらは、図形やイラストを作成するだけでなく、児童・生徒用の資料作成や、先生の教材作成にも利用可能である。特に、Webページのデザインに図形やイラストが多用されることから、Webページ作成用のソフトウェアとしても利用される。さらに、グラフィックスとはやや異なるが、DTP(Desk top publishing)ソフトウェアもある。会報やポスターなどの印刷物を作成するソフトウェアであり、用途は単純なワードプロセッサのソフトウェアと同様に広範囲に及ぶ。このような利用は、学校教育に限定するものではないので、幅広く利用される。

  32) インターネットによるコミュニケーションのツール
     これには、メールやWebに関するツールがある。まず、受信したメールの漢字かな変換処理をしたり、合成音声で読み上げたりする機能を持つツールがある。漢字かな変換では、漢字学習の学年に合わせたり、分かち書きに変換することもできる。このような機能は、子どもや高齢者、日本語が不自由な留学生などにも利用できるものである。一方、メールのフィルタリング(不適切メールの抽出)やメールアドレスの制御を行うツールもある。また、Webの作成やWeb管理を行うためのツールもある。このツールは、Web作成や管理の支援とともに、学習への利用を促進するものである。さらに、インターネットによるテレビ電話システムのソフトウェアもある。これによって、個別指導や面談等が可能であり、さまざまな教育指導でも活用できる。

  33) パソコンのネットワーク管理ツール
     パソコン教室のようなネットワーク接続されたパソコンを一元管理運用するソフトウェアである。ソフトウェアによって、ファイル共有やパソコン設定の一括管理、画面転送や前述のインターネットコミュニケーションツールのような機能を持つものもある。基本的な機能は「教育機器・システム」のコンピュータ、ネットワーク管理システムと同じである。すなわち、ネットワークによるファイル共有や相互利用できる環境を提供し、データベースなどの利用を通して、学校教育における学習活動や教材作成管理が可能である。

    この他、「教育機器・システム」で説明した、
  34) e-ラーニングシステム
  35) 映像ソフトウェア
    も多数回答があった。

  (5) デジタル文具
     デジタル文具としては、「教育機器・システム」で説明した
  36) 電子情報ボード
    「ユーザーインターフェース用機器」の
  37) ペンタブレット
     の回答があった。

  (6) その他
  38) e-ラーニングなどの学習支援システム
  39) 電子図書館システム
  40) 携帯情報端末
  41) 教務支援システム
    などについて回答があった。

4. まとめ
   学習情報資源提供に利用可能な情報機器・システムとしての製品に関する回答者からの回答概要をまとめた(27頁表参照)。学校教育、社会教育、家庭学習でこれらの情報機器・システムが有効に活用されることを期待したい。

表・製品分類(調査結果から作成)
調査時における分類 (数) 番号 具体的製品分類
1.教育機器・システム(73) 1 e-ラーニングなどインターネット利用遠隔教育
2 インターネットサーバクライアント形式システム
3 映像サーバ
4 コンピュータ、ネットワーク管理システム
5 電子情報ボード、(プラズマ)ディスプレイ
6 デジタルカメラ
7 電子辞書
8 電卓
9 教育用コンピュータ
10 手書き入力システム
11 ワープロ操作支援システム
12 el-Net
13 CALLシステム
14 インターネットによる気象データ観測
15 音声再生本
16 デジタル顕微鏡
17 電子楽器
18 図書館システム
2.一般向け情報通信機器・システム(28) 19 携帯情報端末
20 ソフトウェア
21 ハードウェア
22 e-ラーニング
23 VOD
24 表示装置
25 電子情報ボード
26 音声再生本
27 ネットワーク管理システム
3.ユーザーインターフェース用機器 (5) 28 電子情報ボート
29 液晶ディスプレイ付き手書き入力装置
30 音声再生本
4.ソフトウェア(教材・コンテンツは除く)(42) 31 グラフィックスソフトウェア
32 インターネットによるコミュニケーションツール
33 パソコンのネットワーク管理ツール
34 e-ラーニングシステム
35 映像ソフトウェア
5.デジタル文具 (3) 36 電子情報ボード
37 ペンタブレット
6.その他 (7) 38 e-ラーニングなどの学習支援システム
39 電子図書館システム
40 携帯情報端末(PDA)
41 教務支援システム