1.八戸市視聴覚センターの概要
国は、視聴覚教育を振興するためには体系的な条件整備を図る必要があるとし、1970年代に入ると、四つの整備事項を掲げた。第一は、学校教育、社会教育の学習活動にとって必要な視聴覚教材が計画的に制作されること、第二に、制作された教材を指導者・学習者が容易に利用できるように、教材を供給する拠点(視聴覚ライブラリー)が整備されること、第三に、視聴覚教材を利用する学校や社会教育施設に、各種の視聴覚機材が備えられること、第四に、以上のような物的な条件整備に加えて、すべての教育関係者が視聴覚機材・教材を活用し得る能力を持つために、その人的な条件整備を行う視聴覚教育の研修を普及・充実すること、という四本のレールを敷いた。研修カリキュラムは、この第四の整備事項の一環として作成されたものである。
(1) 研修・学習センターとして
幼児から高齢者まで幅広い層に向けて次のような活動をしている。
メディア設備を生かした科学館
学校・生涯学習の指導者を育てる教育メディア講座
子どもの夢を育むクラブ活動、プラネタリウム、映画鑑賞会
子育てのための映像利用学習会
国際交流の場としての英語版プラネタリウム
(2) 情報・研究センターとして
八戸市では、教育情報ネットワークシステムで各小・中学校と主要な教育関係機関がインターネットを利用し結ばれている。
当センターではネットワークの活用も含めて、センターの情報や地域情報の発信など次の取り組みをしている。
HAVC情報(視聴覚センターだより)の発行
インターネットによる情報発信
自作教材発表会
映像データブック(教材目録)
地域の人やものを取り上げた道徳等の自作教材開発
視聴覚整備状況・活用状況の調査
エル・ネット(教育情報衛星通信ネットワーク)
(3) 教材センターとして
八戸市と近隣の10町村で三八視聴覚教育協議会を構成し、効率よく教材の購入を行っている。
運営委員会では各機関の代表者が購入希望をまとめ、購入教材がさまざまな団体・機会で活用されるように工夫している。
コンピュータによる貸出・管理・利用統計
地域教材の開発
2.研修講座の概要(平成14年度)
当センターの研修講座は、初級講座(教育メディア研修講座)→中級講座(ビデオ編集講座)→教材制作講座(長期研修講座)→自作教材発表会の流れで、教材活用の理論から、教材の作成、授業での活用までを支援している。
視聴覚教育に関する研修講座
研 修 ・ 講 座 名 |
対 象 |
期 間 |
教育メディア研修講座 |
幼・保・小・中学校職員、社会教育担当者 |
8日 |
ビデオ編集講座 |
幼・保・小・中学校職員、社会教育担当者 |
2日×2回 |
教材制作講座 |
幼・保・小・中学校職員、社会教育担当者 |
断続10日程度 |
自作教材発表会 |
幼・保・小・中学校職員、社会教育担当者 |
1日 |
視聴覚担当者連絡会 |
視聴覚担当者(幼・保・小・中学校・社会教育) |
3時間 |
IT講習会 |
小学4年生以上の市民 |
12時間×4回 |
小・中学校アナウンス講習会 |
児童・生徒 |
半日 |
校内テレビ放送講習会 |
児童・生徒 |
半日 |
3.研修の企画・運営
視聴覚教育に関する研修講座の実施内容は、当センターで企画している。
市民対象のものは、市の広報等を活用し募集を行い、それ以外の講座の受講者の募集は、各学校や社会教育施設に実施要項を配布して行っている。講座の指導は、指導主事や技師が担当し、必要に応じて外部講師を依頼して実施している。
4.実施内容
(1) 教育メディア研修講座 |
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学校教育や社会教育の担当者を対象にした視聴覚教育研修カリキュラムTに沿った研修。ただし、コンピュータに関する研修は、八戸市総合教育センターで行っている |
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ア. |
16ミリ映写機の操作(9時間)
16ミリ映写機の仕組みや操作についての理論と実技講習。修了試験合格者には、操作修了証を交付。 |
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イ. |
視聴覚教育総論(6時間) |
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・ |
視聴覚教育の意義と方法 (1時間)
わかる授業、魅力ある授業を実践するためのメディアの活用と視聴覚センターの活用について |
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・ |
視聴覚教育概論(2時間)
教材作成の理論と技術、教育メディアの歴史について |
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・ |
教育メディアの最新の動向(3時間)
「ブロードバンドが教育にできること」のタイトルでの講演会 |
ウ. |
スライド教材の作成(3時間) |
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アングルの取り方や接写の仕方など、初心者を対象とした写真撮影の基礎 |
エ. |
OHP教材の作成(3時間) |
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コンピュータを使った写真TP・カラーTPの作成 |
教育メディアの最新の動向 講演会 |
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オ. |
校内放送の実際(3時間) |
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市内の学校を会場に、日常の校内テレビ放送の様子を参観し、校内放送の役割や方法を学ぶ |
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カ. |
ビデオ撮影と編集 |
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・ |
NHKのカメラマンの指導で、編集を前提とした映像の撮影のポイントを学習 |
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・ |
編集機を使ったカット編集 |
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(2) ビデオ編集講座 |
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教育メディア研修講座のビデオ研修修了者を対象とした講座。ビデオ編集機を使って、シーンの組み立てなど本格的な教材制作の方法を研修する。同じ内容の講座を年2回計画。この講座を修了すると、当センターの編集機を使用することができる。 |
(3) 教材制作講座 |
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長期にわたる自己研修講座で、自己テーマによる教材制作に取り組む。制作された教材の授業実践は、「自作教材発表会」で紹介している。 |
(4) 自作教材発表会 |
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学校教育や社会教育に携わる方々が、いろいろな視聴覚メディアを活用して自作した教材を持ち寄って発表しあう。制作された教材の質的向上のため、自作教材が評価される場となっている。 |
5.その他の視聴覚教育に関する研修講座
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(1) 視聴覚担当者連絡会(3時間) |
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学校教育や社会教育の担当者を対象にした視聴覚教育研修カリキュラムTに沿った研修。ただし、コンピュータに関する研修は、八戸市総合教育センターで行っている |
視聴覚担当者連絡会 |
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(2) IT講習会(12時間) |
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小学校4年生以上の市民を対象に、パソコンの基本操作、ワープロ、インターネット、メールの送受信の講習を行っている。外部講師。 |
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(3) 小・中学校アナウンス講習会 |
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市内の児童・生徒を対象に、発声の基本やアナウンスの心構え、原稿の作り方などについての研修を行っている。
講師は、NHKのアナウンサー。 |
市民対象のIT講習会 |
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(4) 校内テレビ放送講習会 |
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市内の学校を会場として、児童・生徒を対象に、校内テレビ放送のしかたについて具体的な研修を行っている。講師は、当センター指導主事。教育メディア研修も兼ねている。 |
6.今後の展望
インターネットでさまざまな検索ができる時代になったが、地域の情報は、地域で発信していかなければ情報は充実していかない。デジタルコンテンツの作成方法や発信方法、その効果的な活用方法など充実した研修ができるよう研修講座の内容を見直していきたい。
また、地域に根ざした生涯学習の充実のために、市民ひとりひとりが、生涯にわたって自主的に学習できるよう、IT講習会やエル・ネットを活用したオープンカレッジ等、生涯各時期に応じた学習機会の充実に努めていきたい。
[井上 貫之]
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