2 訪問調査

加古川市立視聴覚センター
調査実施日 平成14年11月9日
調査対応者 吉須 憲治(加古川市教育研究所指導主事)
         後藤  強(加古川市教育研究所指導主事)

施設の概要
  施設名 加古川市立視聴覚センター   開設 昭和60年11月3日
  設置者 加古川市  
  所 長 平井 孝行  
  〒675-0101 兵庫県加古川市平岡町新在家1224−7
  tel:0794-23-3996 fax:0794-23-8975e-
  mail:kyo_kenkyusho@city.kakogawa.hyogo.jp
  ホームページ http://www.city.kakogawa.hyogo.jp/hp/kakogawaav/
  交通機関 JR山陽本線 東加古川駅下車 徒歩15分
         車  加古川バイパス 加古川東ランプから北へ約3分

1.研修の内容・方法に関して(一般的事項)
 平成14年4月に市の機構改革により、加古川市教育研究所が加古川市立視聴覚センターのある加古川総合文化センター内に事務所を移転するかたちで両機関が統合された。これにより、機関の名称は加古川市教育研究所となった。加古川市立視聴覚センター(以下、センターと略す)は現在、教育研究所内で従来の視聴覚センター・ライブラリー機能のほか専用の施設・設備を備え、従来から教育研究所と視聴覚センターで実施していた視聴覚教育、情報教育に関する研修業務を積極的に進めている。

2.研修の企画・内容の決定に関して
 研修の企画は、視聴覚教育研修と情報教育研修の担当者がそれぞれ行い、センターで内容を検討したのち、正式に決定している。研修の企画・内容決定に際しては、前年度までの研修内容と、地域の教職員からの要望を参考にしている。
 「標準」は、かつては参考資料として活用していたが、現在は参考にしていない。これは、教育メディアの状況が変化したことにより、「標準」で示されているOHPやスライドなどに対する研修のニーズが低くなってきたためである。

3.予算措置に関して
 ノンリニア編集システム使用料と備品購入にかかる費用が大きく、支出の約8割を占めている。その他、印刷費、講師謝金など、総額500万円程度の予算を確保している。

4.研修の開催回数などに関して
 教職員対象のマルチメディア教材作成研修を年に14回、ワープロ、表計算、インターネットの各種アプリケーション・ソフトの活用に関する研修を年7回、ホームページ制作研修を年15回、ビデオ編集研修を年2回、計38回の講座を実施している。
 その他、市民対象のデジタル・ビデオ撮影および編集に関する講座を年に5回、パソコン入門講座(IT講習会)を年15回実施している。パソコン入門講座については、各回5,000円の受講料と600円のテキスト代を徴収している。

5.広報・周知の方法に関して
 研修の周知の方法として、定期的に所報「AVニュース」と広報誌「かこがわ」を作成し、センター要覧、教材目録とともに地域内の学校に配布している。また、ホームページに市民対象の各種講習会や映画会の情報を掲載している。

6.研修のねらい(目標)に関して
 研修のねらいは、視聴覚教育研修、情報教育研修を担当するセンターの指導主事がそれぞれ決定し、研修実施の際に受講者に明示している。

7.研修の内容に関して
 「標準」で取り上げている内容のうち、センターで実施しているのは、ビデオ・カメラによる撮影と編集、およびコンピュータの活用に関する研修である。
 「標準」に記載されていないものを加えている事例として、デジタル・ビデオによる撮影やコンピュータでの動画編集・変換に関する研修の他、ホームページ作成研修、著作権やネチケットなど情報モラルに関する研修がある。

8.設備・機材の確保の状況および利用の形態に関して
 昨年度、IT講習の予算でコンピュータを購入し、現在では十分な研修機材を確保できている。研修機材の利用形態は、個別利用が主である。今後は、市民のニーズや社会の変化に対応した設備・機材の整備を目指す方針であるが、財政の状況から容易ではない。

9.研修担当者および講師の配置に関して
 視聴覚教育研修、情報教育研修にそれぞれ1人ずつ、研修担当者を配置している。研修の担当はセンターの指導主事が務めている。
 教職員対象の講座の講師はセンターの指導主事と、ITコーディネーターが担当し、市民対象の講座は外部委託の講師に依頼している。また、パソコン講習の指導にあたる情報教育指導補助員という制度を設けたり、市民ビデオ講座の指導補助を地域のビデオサークルEasyの会員に依頼するなど、地域における人材の育成と確保に努めている。現在は、加古川市で常時、28名の情報教育指導補助員を確保している。

10.受講者の内訳と定員確保の状況に関して
 受講者は、年に5回実施している市民ビデオ講座とパソコン入門講座以外は、学校の教員が中心であり、現状では定員割れの講座はない。定員枠は、機材の状況や学習内容から決定している。定員枠を超える応募があった場合には、地域の各施設から研修機材を借り受けることにより極力、受講希望に対応するようにしている。また、常に地域内の各種学校と連絡を取り合い、必要に応じて教員を研修に出向かせるネットワークを確立している。
 受講者のグループ分けについて、段階別研修は学習者の習熟度によって配置し、それ以外の研修は受講者の希望に応じている。

11.研修の進め方に関して
 実習を中心として研修を進めている。市民対象のパソコン講習以外の講座は1日で完結するものであり、ねらいとする技術の習得にウェイトをおいている。

12.研修の評価に関して
 受講者には研修修了時にアンケートを記入してもらい、その回答結果を集計して翌年度の研修計画決定の参考にしている。研修の受講修了証は、16ミリ映写機操作技術講習においてのみ発行している。これは、各講座において定員が確保できているため、修了証というインセンティヴは定員確保に必要とならないためである。
 新たな「標準」に研修の評価に関する内容を含むのであれば、それぞれの研修の到達基準を盛り込むのが望ましい。

13.次年度以降の研修計画に関して
 今年度の結果を踏まえ、基本的には、従来からの内容・方法に沿う予定である。

14.現在の「カリキュラムの標準」に関して
 「標準」で示されている「知識」・「技術」という科目分類のうち、特に「知識」の部分は、センターで実施している研修内容や受講者のニーズと合致しない。
 現在の、研修内容の大枠のみを示すという科目の紹介の仕方については、地域の現状に対応した方式として有効性が高いと考える。同様に、カリキュラムから研修科目を選択する現行の「メニュー方式」も、地域の現状や要望に応える方式として有効であると思われるが、もっと多くの研修のオプションや事例が示される必要がある。

15.新・「カリキュラムの標準」の策定に関して
 「標準」は、予算確保の拠り所として重要である。新たな「標準」に各講座を実施する根拠が示されれば、その有用性はいっそう高まると思われる。現在、センターでは情報モラルやネットワーク関連、マルチメディア・ソフト作成に関する研修の需要が高く、これらの内容が新たな「標準」に盛り込まれることが望まれる。
 カリキュラムの構成については、ある程度、柔軟性が必要と思われる。その上で、研修の事例が豊富に示されるのが望ましい。紹介される研修の事例は、常に新しいものに刷新される必要がある。また、「標準」自体も大幅に改定されないにしても、少なくとも2〜3年ごとにある程度、改善される必要があると思われる。
 従来からの国・都道府県・市区町村による3段階研修に関しては、それぞれの組織で異なる内容を扱う必要性を感じないため、研修段階を区別する必要は特にないように思う。また、研修科目を対象者別に分類する必要もないと思われる。それよりはむしろ、学校内研修などとの連携の在り方や、講座修了者をいかに指導者として育成していくかについての方策が示されることが望ましい。

[吉田 広毅]