. 海外訪問調査

英国調査報告
渋谷 英章

7.Learning + Skills Council(LSC−学習+スキルズ・カウンシル)

〔訪問日〕2004年3月5日
〔面談者〕Mr. Keith Duckit, Head of ICT ほか

 LSCのスタッフにBECTAのスタッフなども加わった計5名(写真13)から、パワーポイントを使ったプレゼンテーションにより、「Learning + Skills Councilとe―learning」、「継続教育におけるe―learning」、「e―learningとパートナー」、「e―learningと職場」、「情報学習テクノロジーのプラン」についての説明を受けた。これらのうち、最初の2項目についての内容は次の通りである。


写真13
Keith Duckit氏(左から2人目)
(1)Learning + Skills Councilとe―learning
  1) 英国の17歳の時点で学校に就学する人口の割合は70%強であり、欧米諸国や日本と比べて低い。
  2)英国は中等教育修了資格以上の学歴を持つ者の割合が低く、他方その中では高等教育修了者の割合が高い(中堅レベルの人材が少ない)。
  3)職業上期待されているスキルズと、自分の獲得しているスキルズとのギャップを感じているものが多い(読み書き算等の基礎的スキルズでも15%以上、顧客との接遇、コミュニケーション・スキルズ、ITスキルズ、技術的・実務的スキルズでは50%をこえる)。
  4)LSCの任務
 より多くの青年層が学習を継続し、少なくともGCSE(5)修了レベルに達するように奨励する、経済発展に対する教育・訓練の貢献を最大化する、水準の向上、学習要求の増大

(5)中等教育修了一般資格
 

5)LSCの使命

  質の高い教育訓練を通じて、参加率と達成水準を向上させる、2010年までに、イングランドの青年と成人が世界で有数の知識と生産的スキルズを獲得できるようにする
  6)2004年の5つの主要な目標とターゲット
 教育、学習、訓練への参加率の拡大(16−18歳の学習参加率を80%とする。2000年では75%)、労働力開発における雇用者の係わりの増大、青年の学業達成水準の向上(19歳でGCSEレベル修了を85%、GCE(6)−Aレベル相当修了を55%。2000年にはそれぞれ75%、51%)、成人の学業達成水準の向上(750,000人の読み書き算能力の向上、成人の52%をGCE−Aレベル相当修了に。2000年47%)。教育訓練の質の向上と学習者の満足

(6)中等教育修了資格
  7)16歳以上のe―learningプラン
継続教育カレッジと第6年級カレッジ、成人コミュニティ学習、第6年級、障害者カレッジ(学習障害/学習困難)、職業にもとづいた学習―現代的徒弟制、Ufi(University for industory)/UK Online  
  8)全国学習ネットワーク(NLN)の戦略フレームワーク2002-2005
 生涯学習へのアクセスに対する障壁の除去、e―learningを提供する施設設備の利用に関して、すべての教育関係者が自信を獲得、学習の方法や場所にかかわらず、学習者が学習機会の活用に関して有利な状態であること、学習のマネージャーやファシリテーターが資源・財源を効果的/効率的に利用すること、ビジネスのプロセス、アカウンタビリティのプロセスが単純化されること
  9)共同遂行グループ(Joint Implementation Group)計画の概要
 DfESとLSCによるe―learning政策推進のための積極的な協力、全国レベルでの諸機関や学習提供組織の間の、また内部での協力、特区制度による地方レベルでの e―learning供給計画、実験的、革新的プログラムの発展を認めながら、学習者の選択と混合された学習を支援するe―learningの調整、民間あるいは公共領域にすでに存在する、より良い学習内容やより効果的な学習方法・手段を特定し、それらを教育関係者や学習者が直ちに利用できるようにすること、全国学習ネットワークのオンラインを e―learningの中心的な手段として発展させること、根拠のはっきりした効果的な実践を発掘して、すでに利用が可能で効果的なe―learningの教育学や技術的水準の研究や利用方法を推進すること、成人コミュニティ学習、特別カレッジ、第6年級、職場における学習の提供のためのインフラストラクチャーを発展させること、16歳以降の学習の選択肢として、UfiとUK Onlineを統合すること、しっかりした水準と幅広い実践によって支えられるスタッフ開発のプログラムを拡張すること
  10)2004/05年度にはインフラストラクチャーに予算が投じられるが、2005/06年度には学習内容の充実に予算が用いられる見通しである。

(2)継続教育におけるe―learning
  1)継続教育セクターには以下のものが含まれる
一般的な継続教育カレッジ―フルタイム、あるいはパートタイムの生徒に一般教育から職業教育までの幅広い教育を提供する、第6年級カレッジ―16-19歳の生徒を対象にアカデミック・プログラムにつながる、特別カレッジ―主に芸術、デザインや農業カレッジ
  2)継続教育セクターの規模 
 一般の継続教育カレッジと、高等教育カレッジ(継続教育カレッジと第6年級カレッジが統合されたもの)―259校、第6年級カレッジ―102校、特別カレッジ―28校
  3)カレッジの学生数
「第6年級カレッジ」と「特別カレッジ」の学生数は、それぞれ20万人、6万人程度で一定しているが、「一般の継続教育カレッジと高等教育カレッジ」の学生数は1997/98年度290万人、1998/99年278万人、1999/2000年度270万人、2000/01年度280万人、2001/02年度320万人と大きく変動している。
  4)就学形態
 パートタイムの学生の割合が高く、近年増加傾向にある。最近の英国の青年には比較的早く職業に就き、働きながら学習を継続する傾向があるといわれている。
  5)ICTへの投資(2003−2006)
 
2000−2002(3年間) 7,400万ポンド (第1段階)
2003−2004 5,900万ポンド
2004−2005 7,500万ポンド
2005−2006 8,400万ポンド
総計(2003−2006) 21,800万ポンド
  6)初期の重点施策
 物理的なインフラストラクチャーの改善(ブロードバンド・ネットワークへの投資、各カレッジに2MBの回線の接続を実現する、カレッジのハードウエアの改良に資金を供給する)、e―learningの教材の基準の設定、上記の基準に従った手本となる教材の作成依頼、アドバイス・サービスの開設、スタッフ開発プログラムと先進事例の確立
  7)学生に対するコンピュータの整備状況の変化
1999年度には学生8〜11人あたりにコンピュータ1台のカレッジが最大値であったが、2002年度には3〜4人に1台が一般的になってきている。
  8)スタッフが利用できるコンピュータの変化
1999年度にはひとりのスタッフが1台のコンピュータを使えるカレッジは5校にすぎず、スタッフ共用のコンピュータがあるカレッジは59校であった。2003年度には共用のコンピュータがあるカレッジは60校とあまり変わらないが、専用のコンピュータが備えられているカレッジが31校に増加している。
  9)コミュニケーション手段としてのパソコンの利用の現状
 継続カレッジの経営者からスタッフへ、またスタッフ間でのコンピュータの利用は一般的になっているが、スタッフから学生へ、あるいは学生間でのコンピュータの利用は半分程度に留まっている。
  10)コンピュータが利用されるプログラム
 学習支援プログラムや伝統的な学習方法とコンピュータを組み合わせたプログラムで利用されることは多いが、個人の学習プログラムや遠隔からのアクセスに利用されることは少ない(これはコンピュータの台数が少ないこと、コンピュータを接続する回線の条件が十分ではないことと関連していると考えられる)。
  11)スタッフのコンピュータ活用能力
 コンピュータの操作能力とコンピュータを学習に使用する能力との間にはギャップがあるが、その差は次第に縮まってきている。
  12)次のステップ
接続回線の更なる改善(8MB)、全国学習ネットワーク・オンライン―教育スタッフが求める質の高いサポートへアクセスできる中心ポイントとなる、学習者の教育機会を高めるような資源とガイダンスと職場におけるスキルズの開発支援、e―learning教材のための効率的な商業マーケットの奨励、地方におけるe―learningの供給と発展計画の測定評価、ICTの教育における効果的利用に関する研究のデータベース、研究プログラム、地方において、質の高い教材を開発するためのカレッジならびにスタッフの支援、スタッフ開発のプログラムの拡張、教員資格取得の用件にICT/ILT(Information Learning Technology)スキルズを含ませる、リーダーショップ開発プログラム

 この他、「e―learningとパートナー」では英国のe―learningにおける、政府、政府系エージェンシー等の関係機関、非政府機関、民間団体等の非常に複雑なパートナーシップの関係が、「e―learningと職場」では職業資格制度とICTや職場におけるICTの現状と課題が、「情報学習テクノロジーのプラン」ではe―learning推進の運営システムと戦略の概略の説明がなされたが、詳細は省略する。