.国内における最新の学習資源提供機器利用調査

モニター試用実践事例調査(1)
〔教育機器・システム〕 《手書き入力システム》
〔デジタル文具〕 《ペンタブレット》

手書きのよさを生かしてデジタル情報を作成する

(1) 機器機能
   手書き入力を、簡単にデジタル情報として処理できる機器である。製品は、専用ペンと、ペンを認識する受信機(USB接続)の2つだけである。適当な用紙を受信機に挟み込み、専用ペンで紙に図形を描くだけで、描いた図形を認識する機能を持っている。

(2) 教育機関の概要
   東京都品川区立上神明小学校 全校児童238名・教師数15名(管理職含)。
《情報環境》  
パソコン整備状況  
パソコン室 児童用パソコン 20台

教師用パソコン 1台
各教室    児童・教師用パソコン  1台
職員室 教師用パソコン     7台
  サーバ 2台
LAN環境 各教室・特別教室にLAN配線済み
各教室、音楽室、理科室、図書室、保健室にパソコン設置済み
設置したすべてのパソコンからネットワーク経由でファイル共有、
インターネット接続可能
ペンタブレット接続のための必要環境
USBポート

(3) 活用目的
   手書きのよさを生かした情報を、デジタル情報に変換蓄積し、活用価値を高める。

(4) 活用概要・対象者
   学年・学級だよりにオリジナルのイラストを加える。学級担任・専科教諭を対象。

(5) 実践内容
 
 各学年(学級)では定期的に「おたより」を保護者向けに発行している。
 おたよりといっても文字ばかりでは読みづらく、各担当者は苦労してイラストを素材集などから入れている。イラストを描くことが得意な教師もいるが、マウスを使ってのイラスト作成は、時間がかかる割には出来映えは今ひとつであることが多い。
 この手書き入力システムを使うことで、文字だけでは平板になりがちな学年学級だよりを、スパイスのきいたものにすることができた。操作はごく簡単で、使えるようになるまで10分ほどであった(写真1)。それより大切なことは、何を描くのか、そして、そのイラストで何を伝えるかということであった。

写真1・あっという間にできあがった、学級だよりのロゴマーク

(6) 学習効果
   ソフトウェアと用具の使い方については、事前に10分ほど説明をしたが、担当教師は、すぐに操作方法を理解し、早速イラストを描き始めた。一部英語表示の部分もあったが、ごく簡単なものなのでじきに慣れていく。自分の描いたイラストが一瞬にして、パソコンに取り込まれる様子を目の当たりにした教師は、驚きの声をあげていた(写真2)。
 学校の仕事のデジタル化は過渡期にあるといえる。本校では、コンピュータ設備環境が比較的恵まれており、各学年の学年通信は、各担任が全てコンピュータを利用して作成している。しかし、目的に応じた画像を選び、学年通信に配置していく場面では、まだまだ多くの苦労がある。その一番の原因は、使いたい画像がなかなか見つからない点である。かといって、マウス等を使ってペイントソフトやドローソフトで描くことは、それ相応の技量を要する。
 この手書き入力システムでは、教師の手書きの味を残しつつ、それをデジタル加工することで、紙に描いたイラストが紙面に応じた大きさにレイアウトすることができる。しかも、描いてからデジタル化する段階が非常に簡単なので、大変好評であった。そして、描く線に色を付けたり、太さを変えたりすることもでき、活用の範囲が広がっていく。
 また、パソコン本体との接続も簡単で、USBケーブル1本でつながる。必要なときにケーブルをパソコンに差し込んで使えるので、持ち運びが容易で、広い範囲での活用が期待できる。


写真2・ボードにクリップ形の受信機をつけ、
    手にボードを持ってメモ感覚で入力



(7) 利用可能な活動と利用上の留意点
   手書き入力で作られたイラスト等がデジタル情報として入力できることは、多くの可能性を持っている。この道具は、現段階では教師が文房具の一つとして利用していくことが多いように考えられる。利用可能な活動例を以下に記しておく。
  各種文書内のイラスト作成
     学校教育に限らず、文章と画像による資料提示や情報提示は確かな理解を深めるために欠かすことができない。手書きのイラストは資料的価値に加え作成者の温もりも伝わり、文書の中で重要な役目を果たす。
  学習カードのイラスト作成
     理科や生活科など、体験を伴う活動では、学習カードは必要不可欠のものである。そこに載せるイラストの準備にいつも苦労する。思うようなイラストは既製品にはなかなかなく、自分でイラストを描き、切り張りをして……というのがこれまでのパターンであった。ところが、手書き入力システムを使うと、容易に説明や準備等のイラストを作成することができる。しかも、デジタルデータなのでファイルとして保存もでき、一度作成したイラストを何度も自由な大きさで利用することができるメリットもある。
  授業記録の作成
     教育活動で重要な部分をなすのが、指導と同時に、学習や成長の記録をとっていくことである。この手書き入力システムは、USB接続であるのでポケットPCなどの携帯情報端末に接続することができ、移動しながら記録をとることができる。授業後は、情報をホストコンピュータに送り、データの共有を図ったり資料として活用したりできる。手書きのメモは手軽でどこでもできることが特長である。そのコンセプトを生かした手書き入力システムは、TPOに応じて使い分けてこそ、その価値を発揮する。機器の活用によって仕事の能率を高める姿勢と行動力をもつことがより重要となってくる。

(8) 報告者
 
 東京都品川区立上神明小学校校長 天野 和雄
教諭 細川 猛彦

(9) 資料提供
   株式会社フォトロン http://www.photron.co.jp
 機器型名 手書き入力システムWolsPAD