2 訪問調査

静岡県総合教育センター
調査実施日 平成14年11月1日
調査対応者 唐國 宏章(静岡県総合教育センター指導主事)

施設の概要
  施設名 静岡県総合教育センター   開設 平成7年8月1日
  設置者 静岡県
  所 長 大川 輝行
  〒436-0294 静岡県掛川市富部456番地
  tel:0537-24-9700   fax:0537-24-9707
  e-mail:hpmaster@mail2.shizuoka-c.ed.jp
  ホームページ http://www.shizuoka-c.ed.jp/center/

1.研修の内容・方法に関して(一般的事項)
 静岡県総合教育センター(以下、センターと略す)で実施しているすべての研修が学校教員対象であり、一部管理職対象のものもある。現在行っている研修のうち、複数日にわたるものは基本的には連続する複数日を使って行っている。そのため、遠距離からの受講者については、センター内に設置されている宿泊施設を利用してもらっている

2.研修の企画・内容の決定に関して
 センターでは、それぞれの研修講座につき3名程度の研修担当指導主事を配置し、担当者の合議によって研修の内容を決定している。「標準」については、平成11年度までは研修計画策定の参考資料として活用していたという記録がある。しかしながら、「標準」がメディアの状況など現状にそぐわないため、近年はこれを参考にしていない。現在は、文部科学省の「情報教育の手引き」を参考資料として使っている。

3.予算措置に関して
 センターでは、研修内容の重要性、必要性に応じて予算が分配されている。このような観点から、新たな「標準」において研修内容の根拠や必要性が示されるのであれば、予算確保の措置としても非常に有用であると考えられる。

4.研修の開催回数などに関して
 センター主管の研修は、その内容と段階、対象者により、悉皆研修、推薦研修、希望研修、あすなろ公開講座、その他の研修に分かれている。センター全体で100余講座を実施しており、そのうち、教育メディアに関わる研修は約30講座である。あすなろ公開講座以外の各研修は、宿泊を伴うものが多い。

5.広報・周知の方法に関して
 研修の周知の方法として、Webページ上に研修の予定を掲載するとともに、定期的にポスターや広報誌を作成しこれを配布している。また、毎年度、研修ガイドブックをつくり、県下の各種学校に配っている。

6.研修のねらい(目標)に関して
 研修のねらいは、それぞれの研修を担当するセンターの指導主事が決定し、これを研修ガイドブックに記載している。

7.研修の内容に関して
 「標準」で取り上げている内容のうちセンターで実施しているのは、コンピュータ活用授業法などごく限られており、あまり多くはない。
「標準」に記載されていないものを加えている事例として、ネットワーク関連の研修や、教科「情報」に関する研修などがある。コンピュータ関連の研修が中心であるが、ワープロソフトや表計算ソフトの活用、デジタル・プレゼンテーションについては、悉皆研修で県下の教員の習得が済んでいるので、現在は実施していない。

8.設備・機材の確保の状況および利用の形態に関して
 センターでは160台以上のデスクトップ・コンピュータと80台のノートパソコン、25台のデジタル・カメラと10台のデジタル・ビデオカメラ、30台のスキャナ、50台のプリンタを保有しており、インターネットへの接続は光ファイバー回線を利用している。なお、保管場所や研修に対する要望からOHPや16ミリ映写機、スライド映写機はもはや保有しておらず、ビデオ・プロジェクターや液晶パネルなどを代わりに使っている。研修機材、教材の利用の形態は、基本的に個別利用である。

9.研修担当者および講師の配置に関して
 研修の講師は、主として研修を担当しているセンターの指導主事が務めている。ひとつの研修につき、主任担当者が1名、副担当者が2〜3名という配置である。ごく一部、講演や実習を専門的知識・技能を有する外部講師に依頼している。

10.受講者の内訳と定員確保の状況に関して
 定員が確保されなかった講座は、平成14年度は4つだけであり、ほとんどの講座で定員を超える応募があった。講座の定員枠は主として、機材の状況と研修の内容から決定しており、先着順で定員枠に応募が達した場合には募集を締切る。
 受講者のグループ分けについて、段階別研修は学習者の習熟度によって配置し、それ以外の研修は原則として受講者の希望によって配置している。

11.研修の進め方に関して
 技能の習得だけでなく、その背景にある理論の理解も重要であるため、講義も実施している。講義と実習との関係については、3日間の研修の場合、初日の午前中は講義を行い、それ以外の時間は実習にあてている。

12.研修の評価に関して
 受講者には研修修了時にアンケートを記入してもらい、その回答結果を集計して報告書を作成している。報告書は課内で回覧、吟味し、翌年度の研修計画決定の参考にしている。
 研修の受講修了証は、管理職対象のマネジメント研修においてのみ発行している。これは、各講座に対して平均して定員の倍近くの応募があり、修了証というインセンティヴは定員確保に必要とならないためである

13.次年度以降の研修計画に関して
 詳細についてはまだ定まっていないが、今年度の研修の受講者評価を参考にして、若干の変更がある見込みである。次年度以降は特に、技術・メディアをいかに指導案に組み込み、授業で活用するかに焦点をあてて研修を行う予定である。そのため、コンピュータの基本的な活用法については、あえて研修で取り上げることはせず、悉皆研修と個々の教員の自己学習に任せたいと考えている。

14.現在の「カリキュラムの標準」に関して
 現在の「標準」で扱っている研修の内容は、センターで実施している研修内容とは合致しない。各機関での研修内容は、コンピュータに関わるものが中心であると思われるが、10年前のカリキュラムでは現状に対応できないのではないかと考える。現行の「標準」で示されている研修科目はメディア別に分かれているが、もしこの分類を継続して採用するのであれば、もう少し短いスパンでのカリキュラム改正が必要と思われる。
 現在の、研修内容の大枠のみを示すという科目の紹介の仕方は有効であると思われる。研修内容の枠組みは、ある程度ゆるやかにして、内容の詳細は各研修機関で決定するという方式が望ましい。

15.新・「カリキュラムの標準」の策定に関して
 前記のように、「標準」は予算確保の拠り所としてある意味において必要である。
 カリキュラムの内容については、音声メディアや、携帯電話などの携帯型情報通信機器についての研修、映像(動画、静止画)の各種変換やデジタル・アーカイブに関する研修の重要性が高いと思われる。
 カリキュラムの構成については、研修機関がカリキュラムから自由に研修内容を選択し、実施できるアラカルト方式が最も望ましい。しかし、これを有用とするには、研修の事例が豊富に紹介される必要がある。また、研修にかかる正味時間や、時間の比率による研修時間配分の目安が「標準」に示されるのが望ましい。従来からの国・都道府県・市区町村による3段階研修に関しては、それぞれの組織で異なる内容を扱う必要性を感じないため、別の発想が必要なのではないかと考える。
 いずれにしても、メディアの状況は絶えず変化するため、少なくとも2〜3年ごとにカリキュラムを改善していく必要があると思われる。また、「視聴覚教育」を冠する研修カリキュラムが、何をねらいとしているのかを明確に示すべきである。

[吉田 広毅]