1 状況調査の概要

 状況調査は2段階に分けて実施した。一次調査は、質問紙の調査項目作成のための調査、二次調査は、質問紙調査である。
 一次調査では、8か所の調査対象機関を選定し、訪問によるデプス・インタビューを行った。その後、一次調査の結果を参考にして調査票を作成し、二次調査として郵送法による質問紙調査を行った。

1. 訪問調査
 訪問調査は、平成14年10月中旬から11月中旬にかけて行なわれた。訪問先は、視聴覚教育・メディア教育に関わる研修の実施回数が多いこと、毎年度、一定度の研修に対する予算を確保していること、研修を担当する専任職員が1名以上いること、機関が設置されている都市の人口規模が10万人以上であること、という4つの基準で検討した。さらに、調査地域の多様性、県と市の機関の数的バランス、調査対象機関の多様性を考え、最終的に訪問先として、富山県映像センター、静岡県総合教育センター、岡山県教育センター、岡山県生涯学習センター、金沢市教育研究センター、松本市教育文化センター、静岡市視聴覚センター、加古川市立視聴覚センターの8か所を決定した。

 訪問調査の目的は、視聴覚教育・メディア教育に関する研修の現状とニーズを把握することである。そうすることにより、調査票を作成するにあたっての問題点を明らかにすることを目指した。
具体的には、訪問調査では、研修の内容・方法に関して(一般的事項)、研修の企画・内容の決定に関して、予算措置に関して、研修の開催回数などに関して、広報・周知の方法に関して、研修のねらい(目標)に関して、研修の内容に関して、設備・機材の確保の状況および利用の形態に関して、研修担当者および講師の配置に関して、受講者の内訳と定員確保の状況に関して、研修の進め方に関して、研修の評価に関して、次年度以降の研修計画に関して、現在の「視聴覚教育メディア研修カリキュラムの標準」(以下、標準と略す)に関して、新・「標準」の策定に関して、聞き取りを行った(資料A・109頁参照)。

訪問調査の結果、以下の点が明らかになった。

現在では、「標準」に基づく研修を行っている機関は少ない。
「標準」で示されている研修科目のうち、コンピュータに関わるものなど実施状況の良い科目と、スライドやOHPなど実施状況の悪い科目とに分かれる。
研修講座の定員は機材の状況により決定され、機材の利用は個別利用が主である。
研修の講師は、主として各機関の職員が担当しており、外部講師の依頼は、専門的な領域に関する研修に限る
研修の進め方は、特定の技能習得を目指す実習中心であり、講義の配分は少ない。
研修の修了証など、インセンティヴを用意している機関は少ない。
研修の企画の際の参考資料として、予算確保の手立てとして、ある意味において、「標準」を求める機関が多い。
「標準」は、従来からのいわゆる「メニュー方式」のような、ある程度、柔軟な構成が求められている。
「標準」における研修科目の紹介の仕方について、大枠のみを紹介し、詳細は各機関で決定する、いわゆる「大項目方式」が求められている。
「標準」の改正のスパンは、もう少し短くすることが求められている。
「標準」において、研修の事例の紹介が求められている。


なお、結果の詳細については、訪問機関別に本章第2節に記す。

2. 質問紙調査
質問紙調査は、平成14年12月中旬から平成15年1月中旬にかけて行われた。調査対象は、都道府県および指定都市の教育センター、都道府県および指定都市の生涯学習センター、都道府県および指定都市の視聴覚センター・ライブラリー、そして、市区町村視聴覚センター・ライブラリー、計273か所である。
質問紙調査では、研修の現状について、研修に対する今後のニーズについて、「標準」の普及・利用状況について、そして、「標準」の改正を巡って、回答を求めた。
質問紙調査の目的と方法、結果について、詳細は本章第3節に記す。

[平沢 茂]