<講座プログラムについて>
1)2つの地区が連携したプログラムの在り方について
5回の講座のうち、日本文化にみられる「神話」および「神楽・芸能」という2つの具体的なテーマについて、それぞれ宮崎、島根の各地区の講師による講義を設定し、最後の第5回目には全講師によるパネルディスカッションを行った。このプログラムにより、受講者は宮崎と島根にかかわる神話、神楽と芸能についての内容を詳しく学習ができたようである。また最後に行われたパネルディスカッションでは、各講師による講義のまとめとともにファックスやテレビ会議システムを使って寄せられた質問に回答する時間を長く設けたことが、内容の理解、まとめにも役立ったといえる。なお、両地区が連携したことについて、約85%の人が「よかった」あるいは「まあまあよかった」と感じている(宮崎地区調査)。
2)ライブ放送、神楽の実演について
ライブ放送と録画放送のちがいは、放送会場においても講師や受講者等が緊張感をもって一体となった形で講義、学習が進められること、またその緊張感や臨場感がそのまま遠隔地の受講会場に伝わること、ファックスやテレビ会議システム等での質問に即座に回答できるという点などがある。これらについて考えると、特に、第4回の講義では神楽の実演がライブで行われ、演舞の緊張感と迫力が教室全体を包み、また、そうした雰囲気がテレビ画面を通じても感じ取られたようである。
また、テレビ会議システムで質疑応答を行ったことは、遠隔地の受講会場においても参加型の学習が行えたという点で意義があった。ただ、ファックスによる質問については、すべてには答えることができなかったことは課題として残った。
<講座運営について>
3)県および市町村教育委員会等との連携について
各地区の県教育委員会、受講会場または受講会場管轄の市町村教育委員会およびVSAT局のある宮崎市教育情報研修センターの職員には、本事業実施委員会の各地区協議会の委員を務めていただき、組織的に受講者の募集、受講会場の提供、運営等で協力いただくことができた。こうした自治体等と大学との協力関係では、一方的な協力関係では継続が難しく、双方がともにメリットを享受できるような協力関係の在り方が求められると思われる。
4)放送大学との一部共同による実施について
本講座の第4回、第5回の講義の宮崎市教育情報研修センターでの受講は、放送大学宮崎学習センターが行っている面接授業の一部と共同で実施した。エル・ネット「オープンカレッジ」が放送大学との連携で実施されたのは全国的にこれまでには例がなく、初めての試みであった。このような形態による実施によって、受講者にとっては、いつもと異なった人々との学習で学習の輪が広がったのではないかと思われる。また、放送大学の受講者が神楽の実演を見て学習できたことは、それぞれ単独での実施では実現しなかったことである。
この試みは、放送大学とエル・ネット「オープンカレッジ」の連携の可能性を探る端緒となったのではないかと思われる。これが可能となったのは、放送大学や文部科学省等の関係者の方々のご理解が大きいが、プログラム編成に関わる要因をあげるとすれば、第一に両者の講義内容に共通点を見出せたこと、第二にここでの2回の講義がライブでの放送であったことである。今後、さらにこのような連携を考えるとすれば、実現を可能とさせる条件を明らかにしていくことが必要だと思われる。
5)オープンカレッジの有料制の在り方について
(受講料の課金についての調査の主な結果)
有料制に対する意識
受講料の課金をしていない宮崎地区および島根地区の一部におけるオープンカレッジ有料制に関する調査結果によると、「払ってもよい」という人は宮崎では第1回終了時には70.0%、最終回終了時には81.0%、島根(島根地区の調査結果は中間集計による、以下同じ)では61.1%であった。
受講料について
一般的な講座の1回当たりの受講料としては、「500〜999円」が各地区の調査で最も高くなっている(宮崎38.7%、島根では「500円」が48.5%)。
また、今回の講座1回ごとにどのくらいの受講料を払うことが可能かどうかについて毎回調査を行ったが(宮崎地区)、「500〜999円」が最も多く上記と同様の結果であった。さらにこれを講義内容のわかりやすさとのかかわりでみると、「わかりやすかった」という人では、いずれの回も「500〜999円」が最も比率が高いものの、「わかりやすかった」という人ほど支払い可能額が「1000〜1499円」とする人の比率が高い傾向がみられた。
有料制になったときに期待すること
宮崎と島根の調査で調査項目に若干の違いはあるが、宮崎では「事前に内容をわかりやすく示す」(59.5%)、「テキストを事前に配布する」(34.5%)、「テキスト等の内容を充実させる」(31.0%)などが上位を占めている。島根では「より充実したテキストが提供される」(69.7%)、「著名人の講師による講義が提供される」(42.4%)などが高くなってる。
<通信システムについて>
6)ISDN回線によるテレビ会議システムの利用
宮崎市の放送会場と宮崎県内(3ケ所)と島根県内(1ケ所)の4つの受講会場をISDN回線によるテレビ会議システムで結び、これを用いて島根からもパネリスト2名が登場し、またそれぞれの会場の受講者から質問を受付けた。テレビ会議システムを活用した双方向の講義形態については、約55%の人が「とてもよかった」あるいは「まあまあよかった」と考えている(宮崎地区調査)。しかし、各受講会場からのテレビ会議システムを通じた音声が、衛星通信を経由して放送されたときに聞き取り難い場面があり、受講者からも音質レベルの向上についての希望があった。
7)遠隔地を結んでのパネルディスカッションの在り方について
放送会場と他の会場を結ぶ通信システムが地上系の通信(ISDN回線等)であれば、通常の容量では画質レベルには限界があり、それ通じた長時間の視聴は学習内容の理解や継続の妨げにもなる。できるだけ学習意欲をそぐことなくパネルディスカッションが行えるような条件や必要事項について、今回の実践を通してわかってきた。例えば、遠隔地からの講師には話題の流れによって常に登場できるようにすること、テレビ会議システムによる質議応答の際には放送会場と遠隔地の受講者の質問を交互に行うこと、放送中でも相手先と連絡がとれる回線を確保しておくことなどの留意点があるように思われる。こうしたことが明らかになれば、たやすく遠隔型のパネルディスカッション、シンポジウム、講演会の実施運営に役立つのではないだろうか。 |