(3)広報について
広報は,群馬県内広く広域的に行った。広報展開は以下のとおりである。
@国立赤城青年の家のホームページ
(http://www3.kannet.ne.jp/~akagi-nyc/index.htm)
A「まなびネットぐんま」のホームページ(HP)に赤城青年の家のHPをリンクした。
B国立赤城青年の家の他3会場と共同チラシによる地域の小学校へチラシの配布
C群馬県内のボーイスカウト連盟など青少年団体にも協力を依頼して関係者へ広報
D群馬県内テレビ局,新聞社に広報と取材の依頼を行った。事前の広報として全国紙1紙,地方紙1紙に参加者募集の記事が掲載された。
(4)参加者からの情報の発信
テレビ会議システムを使用して,国立オリンピック記念青少年総合センターと双方向による相撲の技術解説,紙相撲力士の作り方等の遠隔指導,また,舞の海さんの努力や紙相撲のことについて解説や質疑応答を行った。
事業を企画した当初,参加者からの情報発信として,相撲少年団の小・中学生がマルチメディアを使用し,事前にホームページの作成,ビデオの撮影,編集を行い,番組をとおして自分自身で作成した情報を発信しようと計画した。しかし,職員,参加者の日程的な都合で実現できず,実際はビデオ収録内容の決定や収録中の解説は子どもが中心に行い,運営側が撮影,編集したものを当日に放送した。(当日のナレーションは,子どもの声は消して,進行を行った施設ボランティアが行った
(5)VTRによるエル・ネットの活用
エル・ネットで放送された番組を,2日目のプログラムである「体験活動に挑戦!」の動機付け,活動の概要説明として,また,「家庭教育フォーラム」の事前学習,効果的な質疑応答を促進することをねらいとしてVTRを活用した。エル・ネットの活用としては,VTRの使用が事業への活用として最も考えられる方法であり,実際に市民大学のような生涯学習の事業として活用されていることが多い。しかし,今回は多くの社会教育施設に参考となるモデル事業作成のため,単発的な事業としての活用を試みた。活動と利用したVTRは以下のとおりである。
○家庭教育フォーラムの事前学習*1日目の午後に活用
家庭教育セミナー「父親の家庭教育参加のためのシリーズ」
平成12年10月〜12月:国立女性教育会館から放送
第1回:『夫婦のコミュニケーション』講師:広岡守穂他
第2回:『父親の地域参加』講師:岸裕司他
第5回:『仕事と子育て』講師:西東桂子他
○竹とんぼ作り
子ども放送局(平成11年10月23日放送)
「ものづくり教室〜スーパー職人と作るおもしろ竹とんぼ〜」
○紙ひこうき作り
子ども放送局(平成12年 2月12日放送)
「つくろう!ぼくらの飛行機」
○紙ずもう力士作り
子ども放送局(平成13年1月27日放送)
「紙ずもうではっけよいのこった」
*雪のため中止とした「火おこし体験」,「ネイチャーゲーム」についても,子ども放送局の「まるかじり自然体験(平成12年8月5日放送)」のVTRを準備していた。
(6)ボランティアの活用
子ども放送局を活用した事業が展開できない理由の一つとして,「職員が少ないため,子ども放送局の活動を指導できない」という意見がある。しかし,国の施策,社会的な要請,青年の側からの活動欲求等のため,社会教育施設ではボランティアを活用することが求められており,実際に活躍できる機会は多い。特に国立の青少年教育施設では,地域の核となり,施設ボランティアの育成,ネットワーク作り等を進めている。
そこで,今回のモデル事業では,国立赤城青年の家施設ボランティア,桐生市,藤岡市のボランティア団体と協力し,18人のボランティアと共同で運営を実施した。事前のミーティングで担当職員が,必要な係とその人数を示し,話し合いにより分担を決定させた。以下は今回の事業の各担当とその人数である
国立赤城青年の家子ども放送局担当(7人)
@子ども放送局の進行,Aカメラ補助,B紙ずもう力士づくり準備・指導
家庭教育フォーラム担当(2名)
@VTRセット,会場セッティング,記録等
他受信局「紙ずもう力士作りに挑戦!」進行役他(9名)
@桐生市青年の家,A藤岡中央児童館,B前橋市児童文化センター
「体験活動に挑戦!」指導(8人)*28日実施
@竹とんぼ作り,A紙ひこうき作り,B紙ずもう作り
(7)エル・ネットを活用した事業を広域的に展開
子ども放送局の「紙相撲作りに挑戦!」では,子ども放送局を広域展開として活用するため,群馬県内の子ども放送局受信局3施設(桐生市青年の家,藤岡中央児童館,前橋市児童文化センター)と連携して事業展開を行った。連携内容としては,3施設で事業の同時開催,共通の広報展開,3施設への国立赤城青年の家施設ボランティアの派遣である。大雪のため,それぞれの施設の参加者は10名程度であったが,ボランティアによる指導のもと,自分で作った紙相撲による白熱した対戦が行われた。また,紙ずもうについての質問を主会場(国立オリンピック記念青少年総合センター)にファックスで送信し,5人の子どもからの質問が放送で紹介された。
(8)「家庭教育セミナー」の活用
「家庭教育セミナー」を活用し,「今からでも間に合う家庭教育の変革〜家庭と地域社会が連携して子どもをはぐくむ〜」というテーマの家庭教育フォーラムを実施した。翌日のディスカッションの効果を上げるため,前日にフォーラムのパネリストが講義するビデオを視聴した。
○西東桂子(フリーエディター):「幼児からの心の教育を踏まえた子育てと仕事」
○岸裕司(秋津コミュニティ会長):「父親も地域の学校で子どもを育てる秋津コミュニティでの取り組み」
○広岡守穂(中央大学教授):「夫婦のコミュニケーションと共同して行う子育て」
*コーディネーター 中野洋恵(国立女性教育会館主任研究官)
4.事業の成果と課題
(1)参加者の感想
子どもからの回答では,子ども放送局については,以上の子どもが「知らない」,「聞いたことはあるが見たことはない」という回答であった。しかし,今回の事業をとおして3分の2の参加者が「子ども放送局」に参加してみたいという回答であったことを考えると,全体的には参加者の満足できる内容であったと思われる。
成人の参加者は大雪のため少なかったのでアンケート結果から評価を求めるのは難しいが,エル・ネットについて8割近くは知らず,番組を見たことがある人はいなかった。しかし,「見ることのできなかった講師が講義をしているビデオをぜひ見てみたい」等の回答から推察すると,エル・ネットの周知はできたと考えられる。
・テレビ電話による双方向の相撲の指導は,わかりやすかった。
・ボランティアは大変親切だった。
・紙ずもう力士づくりは楽しかったが,画面では作り方がよくわからないところや,聞き取りづらいところも少しあった。
・質疑が自分の地域にも当てはまっている問題だったので,とても考えさせられた。
・地域をとおして子どもの社会性をはぐくむ話は具体性がありよかった。
(2)「紙ずもう力士づくりに挑戦!」同時展開施設からの評価(3施設からの回答)
・参加者が送ったFAXが読まれたときは真剣にテレビを見ていた。
・これからの事業に国立赤城青年の家のボランティアを活用してみたい。
・赤城青年の家との連絡が十分とは言えず,満足のできる準備態勢を取れなかった。
・専門的な指導者の派遣が得られればエル・ネット活用事業の実施は可能。
(3)施設ボランティアからの評価(18名の内,7名からの回答)
事業の準備から実施までの運営態勢,自分の関わり方について,ボランティアから4段階で評価をしてもらった。特に点数の高い回答については以下のとおりである。
・進行マニュアルがよくできていたのでミーティングがスムーズであった。
・事前の打ち合わせは実施に大変効果的であった。
・移動時などで緊急事態が発生したときの対応マニュアルができていなかった。
・「体験活動に挑戦!」で子ども放送局のVTRを事前指導として使用したが,活動に際して全員の参加者に効果的であったかどうか判断が難しい。
(4)モデル事業実施の成果
・参加者は少なかったが,HP,報道機関の活用,ポスター,チラシ等,広範囲の広報によりエル・ネットの周知ができた。
・宿泊型の青少年教育施設における体験活動を主体においたエル・ネットの活用事例を提案することができた。
・エル・ネットを活用した事業を複数の社会教育施設が共同して展開するモデルの提示ができた。
・群馬県内の社会教育施設が国立赤城青年の家のボランティアについて理解を深めることができたため,今後施設側がボランティアの活用を検討する機会となった。
(5)今後の課題
・双方向性を持った事業,また,他の施設等と連携した事業では,番組の進行案作成から綿密な打ち合わせを重ね,お互いのねらいを明確にして実施する。
・双方向性を重視した事業では,参加者自ら作る情報発信の部分に時間をかけ,さらに情報通信メディアに長けたボランティアを活用して実施する必要がある。
・社会教育施設では,個人の学習教材になりがちなエル・ネットを,積極的に他人との集団学習,体験活動の効果を上げるものとして活用していく必要がある。
・社会教育施設でも,施設の活動プログラムが効果的となるエル・ネットの活用を検討し,放送番組の内容に対して積極的に提案していく必要がある。
・エル・ネットの周知,活用を進めるため,高等及び中等教育機関,NPO等と連携を図り,ボランティアの活動の場を積極的に作り出すような事業が求められる。
・国立青少年教育施設等の社会教育における地域の核となる施設は,容易に事業として企画できるプログラム開発を進め,積極的に他の受信施設と連携し,エル・ネットを活用した事業を数多く実施することで,事業例を蓄積する必要がある。
(国立赤城青年の家 時安和行)