1.モデル地域における実証的な検証について
三 明 正 嗣
1.モデル委員会

千葉県視聴覚センターに拠点を置き、センターの研究指導主事1名、高等学校教諭2名、小学校教諭1名で委員会を組織した。

2.千葉県視聴覚センターが保有する映像資産

分類 種   別 媒   体 著 作 権 者
一般映画教材 16ミリフィルム 一般映画会社 等
16ミリ教育放送 16ミリフィルム 県教育委員会
Uマチック教育放送 Uマチックビデオテープ 県教育委員会
S-VHS教育放送 S-VHSビデオテープ 県教育委員会
一般ビデオ教材 VHSビデオテープ 一般映画会社 等
その他 (県政映画等 16ミリフィルム 千葉県 等
 
千葉県視聴覚センターはこれらの活用に努めてきている。    
3.モデル委員会の試み

(1)取り組みの柱

映像の保護
 県及び県教育委員会が著作権を有する映像を記録メディアの劣化から保護するためにデジタル化する。
 本モデル委員会は、映像をデジタル化し後世にまで残す形を整えることで、映像そのものが持つ価値に歴史的な価値を加えることができると考えている。これにより、現在行われている古文書等による研究のように、古い映像資料による研究が盛んに行われるようになるであろう。
 千葉県視聴覚センターでは、平成14年度末までに約1,000本の教材のデジタル化を達成した。

(参考)
 デジタル化に用いたフォーマット:DVCAM(テープメディア)
 その理由:
a. 大きな非可逆性圧縮を加えることなく高画質な記録ができる。
b. パソコンに取り込み加工することができる。
c. DVCAMは業務用の規格としては比較的安価で経済的な負担を押さえられる。
DVCAMと同等の規格もあるが、これまでの千葉県視聴覚センターの環境を考えた。
d. これまでと比べ、サイズが小さく保存が楽である。耐久性も期待できる。

映像資産の活用
 テープメディアにデジタル化された映像は、活用に関してはあまり有利とはいえない。画質はオリジナルに勝ることなく、再生機器も普及しているとはいえない。
 本モデル委員会では、これまで以上の利用促進をめざし、デジタル画像を圧縮変換した上でデータベース化を図ることを考えた。その理由は以下の通りである。

a. インターネットをはじめとするネットワーク上に置くことができる。
b. これまでは、1本の映像教材を一斉視聴する利用形態がほとんどであったが、ネットワーク上で個別の利用を可能にする。
c. データベース化することで、映像が事典的な役割を果たすことができる。

(2)データベース化するに当たって(圧縮フォーマットの検討)

 データベース化するに当たって、本モデル委員会ではどのような圧縮フォーマットを採用するかの検討をした。候補は、MPEG4(28.8Kbps・56Kbps・250Kbps・3Mbps)、MPEG1(1.8Mbps)、MPEG2(8Mbps)とした。

検討結果

MPEG4
(28.8Kbps・56Kbps)
画質が悪い。パソコンでフルスクリーン表示させたとき視聴に耐えない。
雰囲気を伝える程度でしか使えない。
MPEG4
(250Kbps)
MPEG1と比べると画質が遙かに劣る。
高速通信回線の進歩を考えるとき、中途半端である。
MPEG1(1.8Mbps)
パソコンでフルスクリーン表示させても視聴に耐える。
(MPEG1はVHSビデオ程度の画質と表されることが多い。)
転送速度は、近い将来のインターネットの通信速度を想定(一般家庭レベルで10Mbps程度)すると無理なくネット配信ができる。
MPEG4(3Mbps)
画質はよいが、大きなブロックノイズが気になる。
画質を求めるなら、MPEG2を採用するべきであろう。
MPEG2(8Mbps)
画質は非常によい。
大きな画像転送速度はネットワークに負担をかける。
DVD−VIDEOとしての利用が考えられる。

 以上の検討結果より、MPEG1及びMPEG2の圧縮を採用することとした。
(3)データベースの作成

MPEG1によるデータベースの作成
a.素材:
  昭和30年代に制作された県政映画22本(1本約10分)
 (将来的には、県が著作権を持っているすべての教材を対象にしたいと考えている。)

b.検索するためのシステム:
  どんな環境でも動作する簡単なHTMLの検索システム
 ※インターネットに配信することを想定するとCGIプログラム等を利用した検索エンジンがよいが、(現在千葉県視聴覚センターでは、その基となる検索エンジンを開発している。)現在の通信速度等の問題を考えるとインターネット配信は事実上不可能であるため、Webの環境がなくても動作するものにした。

c.開発における留意点
  • IT初心者でも比較的楽に目的の教材にたどり着くようにする。
  • 少ないクリック回数で動画を表示させることができる。
  • 階層を深くしない。
  • 目的別の索引をもうける。
  • タイトルごとにキーワードをつけ、内容が分かるようにする。 等

DVD−VIDEO(MPEG2)の作成
a.素材:
   教育放送教材の中の房総プロムナードシリーズ

b.開発における留意点   
  • わかりやすいメニュー画面を作る。
  • 番組の内容がわかる説明を加える。
  • 内容を吟味し、チャプター(章)に分類する。 等

(タイトル)
(教材一覧)
(詳細情報)


(4)データベースの配信実験
 
作成したデータベースを所内LANの中で配信実験をした。
通信速度 同時アクセス数 結     果
100Mbps(理論値) 40 ロスなく再生した。
10Mbps(理論値) 2 何とか再生できた。
10Mbps(理論値) 3以上 コマ落ち等の問題が発生した。
※ 理論値の速度がそのままでない。数字は、環境によって若干の違いが出る。

(5)DVD−VIDEOの再生実験

機種 備 考 結 果
オーサリングしたDVDR/RWドライブ(P社・H13購入) ○認識 ○再生
DVD-ROMドライブ(S社・H12購入) ○認識 ×再生
DVD-ROMドライブ(G社・H10購入) ×認識 ×再生
DVD-Rドライブ(S社・H12購入) ○認識 ○再生
DVDプレイヤー(M社・H10購入) ×認識 ×再生
DVDプレイヤー(P社・H10購入) ○認識 ×再生
第1世代と呼ばれる初期のDVDプレイヤーやDVD-ROMドライブでは、DVD−Rに記録されたDVD−VIDEOを認識しなかった。
第2世代目の規格を採用したDVDプレイヤーやDVD−ROMドライブも、機種によって結果が異なることが確認できた。
各方面での利用実験は時期尚早と考え、断念した。

(6)データベースの利用
 
上記のデータベースを各方面に紹介し、その反応を収集した。

社会教育関係者の主な意見

学校教育関係者の主な意見

学識経験者の主な意見

公民館主催講座受講者(高齢者が多い)の主な意見

児童・生徒の主な意見