訪問調査施設名 北村山視聴覚教育センター(山形県)

回答者 原田 成夫 (北村山広域行政事務組合教育委員会庶務主査)
  太田 恒彦 (北村山視聴覚教育センター所長補佐)
調査担当 松田  實 (全国視聴覚教育連盟事務局長)
  岡部 守男 (財団法人日本視聴覚教育協会常務理事)



1.施設の概要

名称: 北村山視聴覚教育センター(北村山広域行政事務組合)
所在地: 〒995山形県村山市一丁目3番6号
  TEL 0237-55-4211 Fax 0237-55-4959
E-Mail: center@kavec.murayama.yamagata.jp
ホームページ: http://www.kavec.murayama.yamagata.jp/
設置者: 北村山広域行政事務組合
設置根拠: 条例設置・ 開設年度 昭和49年
組織: 所長(兼任)事務職員3名(兼任)指導職員5名(内1名視聴覚担当)
施設内容: 学習室/プラネタリュウム/ビデオ編集室/録音編集室/機材保管庫/教材展示室/教材制作室/視聴覚室・・・他
貸出教材保有数: 16mm1,750本/ビデオテープ1,608本/パソコンソフト206組

2.主たる事業

研究・研修活動: 学校教育、社会教育に関する視聴覚関係の研修の実施及び視聴覚に関する相談、助言,及び調査研究
学習情報の提供: 視聴覚機材・教材等の収集と提供、地域性を生かした教材の開発・制作
施設利用の学習: センター利用学習についてはそれぞれの教育目標との関連において実施
連携協力体制: 各教育機関や施設、団体等との連携を図りながら、視聴覚教育に 関する啓蒙普及を行う。

3.聞き取り調査の結果

(1)地域映像教材の制作状況
 北村山視聴覚教育センターは、昭和49年発足当時より、地域に素材を求め、地域の学習に役立つビデオ教材を制作してきている。
 しかし、北村山視聴覚教育センターの場合は、利用対象を学校教育と社会教育としているが、実際には学校教育が主となっており、学習指導に役立つ映像教材の制作提供を主目的としている。
 制作した作品は、下記リストのようになっていて、文字通り地域映像教材で、優れた教材も多く、日本視聴覚教育協会主催の全国自作視聴覚教材コンクールを始め山形県の自作視聴覚教材コンクール等で数多くの入賞作品を出している。
 (資料1)「平成13年度現在の地域映像教材(抜粋)」
(注)同じタイトルが2本書かれているが、1本は貸出用マスター・もう1本は保存用である。
(2)地域映像教材制作の経緯
 
創生期 手作りの地域映像
 北村山視聴覚教育センターが、地域映像教材の制作を開始した昭和50年前後は、センターの職員が、重いオープンビデオデッキとカメラを用意して、制作にあたっている。
 当時の技術では非常に困難であったテープ編集を避けるために、どのようなねらいの作品を作るか、企画からシナリオまでかなりきっちりとつくり、時間から画面構成まで厳密に書き込んだ絵コンテ通りに順撮りするという、ノンリニア編集で簡単に映像作品に仕上げる環境が整っている今日では考えられない制作作業を行ってきた。
 しかし、制作スタッフとして、このような手作業を体験したことにより、地域内の学校の視聴覚主任や地域のビデオボランティアの制作技術の基礎が養われ、今日に至っている。
 実際に試写していただいた当時の作品は、アマチュアの域を超える良質の作品となって保存されている。
 
現在の活動 ふるさと映像制作事業
 北村山視聴覚教育センターでは「地域づくり」「ふるさとづくり」などを目的としたさまざまな活動が行われている。
 なかでも、古くから伝承されている行事を、永く後世に伝えるために映像化して保存する活動を行っている。また、制作したビデオテープは、編集ダビングして、センターの貸し出し教材としても活用している。
 ボランティア団体では、撮影作業全般を行うので、自分たちの技術力の向上に役立てている。また、さまざまな伝統行事を見ることができるので、映像で保存するだけでなく、会員自身の記憶としても孫子に地域の文化を伝承できる。何よりも、住民の地域への関心や愛着を定着することが大きな成果といえよう。
 
「かさ踊りの里」 21分 中学校・一般
かさ踊り発祥の地、尾花沢市で行われる数種類のかさ踊りの方法と由来を紹介する。
  「六田の焼きふづくり」21分 中学校・一般
江戸時代から伝統として小麦を原料に焼きふを生産している東根市の六田地区。その作り方、栄養価について紹介する。

今後の課題 地域映像教材制作ボランティアの課題
 前述の地域映像教材を制作しているビデオボランティア団体の活動について、地域映像のアーカイブ化を進めるために、これからも活発な活動が期待できるか尋ねてみた。
 しかし、現実的には、ボランティアとして活動してくれた人々、新しくグループに加わった人々も含めて高齢化が進み、かなりのエネルギーを必要とする計画的な制作作業に耐えられなくなっている。
 中年層のビデオ愛好家は、仕事の多忙さに加えて、自分の作りたいものを、ひとりで作ることを好み、実際に協力を依頼しても参加できない傾向にあるという。(スタッフとしての映像作りには消極的ということか)
 
(3)地域映像教材の貸し出しと保存
 
よく利用されている記録映像
 北村山の場合、地域映像教材を貸し出し用と保存用とにはっきりと分けて管理しており、一階のビデオルームには、一般の方々が自由に借りていけるようにオープンにされており、特に地域の記録映像は人気があり、多く貸し出されているという。
 その他、地域映像作品は、必ず、各学校をはじめ、公民館、図書館等大勢の人々が集まる施設等には、計画的に配置して、いつでも視聴できるようにしている。
はっきりと分けている保存用と貸出し用
 2階には、貸し出し禁止の地域映像教材が、DVD化して、保管戸棚の中にしっかりと保存されており、誰が来ても貸し出さない(例えNHKが借用を申し出てもダメ)ようになっている。  旧メディアによる初期の作品は、まず作品の劣化を食い止め、良い映像を確保し、保存用と貸し出し用のマスターとに分けて、必要に応じてダビングサービスして提供することをメインとしている。
 また、保存の方法としては、DVD化して保存するようにしており、保存が必要と決めた作品は、すでに完了していた。
 今後も、現状でもっとも保存に適していると思われるメディアで、蓄積しておきたいと話してくれた。
 当時の作品を試写してもらったが、昭和50年前後の8ミリ映画、オープンビデオ、ベータ方式のビデオ、初期のVHSなどの中から、保存する価値のあると判断したものは、すでにDVD化を完了しており、最も初期の8ミリ映画とオープンビデオが比較的よい状態で保存されていた。(われわれも本物ではなくダビングした方を視聴させていただいた)
 
(資料2)「地域映像教材リスト(抜粋)」

 
視聴した地域映像教材           
 「赤井川の源流を訪ねて(8ミリ映画をビデオ化)」
  画質も、30年近くの年月を感じさせないよい状態であった。
 
(4)他地域でも役立つ地域映像教材
 その他、2〜3本の作品を試写していただいたが、中には、北村山地区だけに役立つ地域映像教材ばかりでなく、他地域の学校や社会教育での学習に役立つ作品もあり、例えば、すでに亡くなられている「村山に居住していた当時の斉藤茂吉」にまつわるビデオなどは、どこの地域でも俳句の学習、あるいは「斉藤茂吉研究」の資料としては、世に出ていない貴重な映像教材であろう。
 そのほかにも「さくらんぼづくり」「よみがえったじゅんさい」など、北村山視聴覚教育センターが、地域の中から素材を発掘し、映像化し世に発表した作品のように、全国各地の視聴覚センター・ライブラリーの戸棚にも、優れた地域映像教材が、関係者がその価値に気づくことなく、眠っているのではないだろうか。
 
(5)地域映像教材のアーカイブ化は必要
 最後に、どのようなシステムにするかは別の問題として、全国の視聴覚センター・ライブラリーが保存している、貴重な各地域の映像教材をアーカイブ化して、エル・ネットや情報通信ネットワークで、相互に活用する、新しい視聴覚センター・ライブラリーの機能について伺った。
 この問題については、次のような意見を述べている。
 まず、アーカイブ化して、それぞれの地域映像を提供しあい、いつでも、どこでも、利用できることには、情報化社会での視聴覚センター・ライブラリーの新しい機能として必要と思うと述べている。
 しかし、現実の問題として、北村山としては、まず地域住民へのサービスを最優先に考えたいと述べ、自らの地域映像を提供し、他地域との共用といっても、保存している地域映像教材の一部であろうと述べている。
 仮に、地域映像教材を提供するとしても、さまざまな問題が発生してくるのも事実である。
 第1は、著作権に係る問題をどう処理するのか、地域映像だからすべてが権利問題をクリアしているとは限らない。
 第2は、丸ごとアーカイブ化するならばともかく、その作品を資料として、ぶつ切りにして使うならば制作の意図を考えたとき消極的にならざるを得ない。
 なぜなら、北村山視聴覚教育センターの場合、開設以来、作品として制作・蓄積して利用することを目的としてきており、それが地域のニーズでもある。
 第3は、アーカイブ化の方法にもよるが、地域映像作品として制作してきているので、音声音楽を伴う映像の中から映像素材として一部を切り出す作業は困難だと思う。
 従って、北村山視聴覚教育センターとして、アーカイブ化に伴い提供できる地域映像は、作品のねらいや内容、著作権等を勘案した時、現在、保有している教材の一部であると、アンケート調査には回答している。

4.聞き取り調査を終えて

 地味ではあるが、地域住民に開かれた視聴覚教育センターとして、実績を上げているセンターは、われわれが用意して行った問題については、的確な手が打たれており、アーカイブ化についても、地域の計画を踏まえ慎重な姿勢を示していた。
 今回の聞き取り調査で明らかになったことを列挙すると次のようなことが浮かび上がってきた。

(1)旧式なメディアやソフトへの対応
(2)予想を超える地域映像教材の量

(3)映像作品と映像素材のギャップ  
(4)ビデオボランティア活動の活性化